
(1) 等価内容積
ワークとテスターを含む測定系全体の内容積により、漏れによる差圧変化量は異なります。また、計測時間にも大きく関連します。
エアリークテスターではこの内容積として、計測系全体の圧力変動要因(ワークや差圧センサーの内圧による容積変化)の影響を考慮した等価内容積(Ve)と呼ぶ係数を使用します。等価内容積は次式を用いて算出することができます。またエアリークテスターの機種によっては、オートリークキャリブレーター(ALC)、またはリークマスターを使用して直接Ve値を計測することができます。
Ve=Vw+Vt+{Ks(1+Vw/Vm)+Kw}(101.3+P)
Vw=Vm(ワークとマスターの容積が同じ)
Ks=0.01mL/kPaまたは0.005mL/kPa(機種により異なる)
Kw=0mL/kPa(ワーク容積変化が無い)
上記の条件のとき
Ks(1+Vw/Vm)+Kw=2Ks
l Ks=0.01mL/kPaのとき
Ve=Vw+Vt+0.02(101.3+P)
l Ks=0.005mL/kPaのとき
Ve=Vw+Vt+0.01(101.3+P)
Ve:等価内容積(mL)
Vw:ワークと配管の内容積(mL)
Vt:テスター内容積(mL)Vt = 9mL
Ks:圧力に対するセンサーの容積変化率(mL/kPa)
Kw:圧力に対するワークの容積変化率
P:テスト圧(kPa)
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Q :漏れ量(mL/min) ΔP:差圧(Pa) Ve:等価内容積(mL) T:検出時間(s) |
例:等価内容積が800mLのとき検出時間3秒間で15Paの差圧が発生した。このときの漏れ量はいくらか。
<※COMMENT> 漏れによって発生する差圧は等価内容積に 反比例します。 〔例〕 等価内容積の比が 1:5のとき同じ漏れ量での差圧は5:1になります。 Q:5mL/min T:2s Ve = 200 mLのとき ΔP1=85Pa Ve = 1000 mLのとき ΔP2=17Pa |
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<参考資料>気体の圧力と性質
a.絶対圧:絶対真空を基準とした圧力 例:PaA、kg/cm2A(またはkg/cm2abs)、Torr(絶対圧力=大気圧+ゲージ圧) b.ゲージ圧:大気圧を基準とした圧力 (正圧/負圧)例:PaG、kg/cm2G c.差圧:二つの圧力の差例:PaD、kg/cm2D |
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(2) 圧力の単位 1bar=0.1MPa=1.01972kg/cm2,1Pa=1N/m2,1Torr=1mmHg
Pa | kg/cm2 | mmH2O | mmHg | PSI | |
1Pa | 1 | 1.01972×10E-5 | 0.101972 | 7.50062×10E-3 | 1.45038×10E-4 |
1kg/cm2 | 9.80665×10E4 | 1 | 104 | 735.559 | 14.2233 |
1mmH2O | 9.80665 | 10E-4 | 1 | 7.35559×10E-2 | 1.42233×10E-3 |
1mmHg | 133.322 | 1.35951×10E-3 | 13.5951 | 1 | 1.93368×10E-2 |
1PSI | 6894.76 | 7.03070×10E-2 | 703.070 | 51.7149 | 1 |
注:10E-3は10の-3乗をあらわします
(1)検出時間の設定とリーク規格値の算出
等価内容積Veを使用してリーク規格値Qに相当する差圧値と検出時間(T3)を求め設定します。一般的には検出時間2~10s、設定差圧値ΔPは±10~100Paの範囲の設定が適当です。
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Q :漏れ量 (mL/min) Ve :等価内容積 (mL) ΔP:差圧 (Pa) T :検出時間 (s) 漏れ量直読表示機能のあるリークテスターを使用の場合は差圧の設定の必要はありません。 |
※上図に検出時間は含んでいません。
※要求される精度によっても時間は変ります。
※低圧←テスト圧→高圧
低圧(10~100kPa)高圧(100~600kPa)
<※COMMENT>
実験や立ち上げ調整時に計測時間を設定するときは、まずワークや治具に確実に漏れのないことを確認します。その後、最初は加圧時間を十分に長くとりデータ取りを行います。徐々にこの時間を短くしてデータがゼロ近くで安定している最短の加圧、平衡時間を求めます。
(1)実際の気体と液体の漏れ量比
一般的にエアーと液体(水、油)の漏れ量はハーゲンポアズィユの法則に従い粘度と圧力により決まります。但し、漏れ穴が円管で表面が滑らかな条件としています。現実には巣漏れや溶接不良によるピンホールは凹凸やくびれがある複雑な形状の粗面です。このような場合は気体と液体の相関は完全に理論式にあてはまるとは限りません。
実際には微小漏れにおいては、エアーで漏れても液体では漏れないという現象がおきます。多くの場合微小漏れではエアーと液体の漏れ量は理論以上の大きな漏れ量比となります。これは液体と漏れ穴内面に表面張力が働き流量抵抗が増大するためと考えられます。
<※COMMENT>
※漏れ量比較実験の注意点
気体と液体の漏れ量は異物が原因となり相関がとれてないことが多くあります。特に一度液体で漏れた漏れ穴に対しエアーで計測すると漏れ量が小さくなったり止まったり再現性を得ることは困難になります。漏れ量の比較実験を行う場合には必ずエアーでの試験を最初に行うようにして下さい。
<※COMMENT>
ハーゲンポアズィユ(Hagen Poiseuille)の式
![]() Qa:エアー漏れ量(atm mL/s) Ql:液体漏れ量(atm mL/s) ηa:エアー粘度(Pa・s) ηl:液体粘度(Pa・s) Pa:エアーテスト圧(kPa) Pl:液体テスト圧(kPa) |
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<※COMMENT>
同じ気体でテスト圧を変更した時、変更後の漏れ量は次の式で求めることができます。
漏れ量の式
P1:変更前のテスト圧(kPa)
P2:変更後のテスト圧(kPa)
Q1:変更前の漏れ量(mL/min)
Q2:変更後の漏れ量(mL/min)
パッキンによるシール部分の漏れのようにテスト圧を変えると漏れ穴の形状が変わる可能性のある場合の漏れ量比は理論式と異なります。
差圧を漏れ量単位で表示するため、等価内容積を計測する必要があります。このことをリークキャリブレーションと言いリークテスターにとって重要な要素です。
1 容積変化方式のリークキャリブレーターによる等価内容積(Ve)の計測(特許)
リークテスターをキャリブレーションモードで起動させ、検出時間中にワーク測定系に対し一定の容積変化(ΔV)を発生させます。ここで発生する差圧(ΔP)を検出し対象となる測定系の等価内容積(Ve)値を自動的に算出します。計測したVeを使って漏れ量単位(例えばmL/min)で表示することができます。
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Ve:等価内容積(mL) ΔV:容積変化量(mL) ΔP:差圧(Pa) P:テスト圧(kPa) |
<※COMMENT>
オートリークキャリブレーターに関する特許内容の要約 (特許第1775588号)
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ΔV:容積変化量(mL) Ve :推定の等価内容積(mL) P :テスト圧(kPa) ΔP:差圧(Pa)最大1000Paです。 |
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オートリークキャリブレーター リークテスターに内蔵され全自動で動作します。 |
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LCタイプ 検出時にダイアルを回転させ容積変化を発生させます。テスト圧によっては操作できません。 |
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QLCタイプ ワンタッチで任意の容積変化を発生させることができます。操作が簡単で日常点検にも便利です。テスト圧を加えた状態で操作が可能です。 |
ΔPが1000Paのときに求まるΔVフルスケールの値に最も近い(フルスケール以上でも以下でもよい)リークキャリブレーターを選択します。
※F.S=フルスケール
テスト条件 | オートリークキャリブレーター | マニュアルリークキャリブレーター | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
LCタイプ | QLCタイプ | ||||||
ワーク容積 | テスト圧 | 型式 | F.S. | 型式 | F.S.* | 型式 | F.S.* |
小容積 | 中・高圧 | ALC-05 | 0.5mL | - | - | QLC-0021 | 0.2mL |
小・中容積 | 低・中・高圧 | ALC-1 | 1mL | LC-12 | 1mL | QLC-0101 | 1mL |
小・中・大容積 | 低・中圧 | - | - | LC-22 | 2mL | - | - |
中・大容積 | 低・中圧 | ALC-4 | 4mL | LC-42 | 4mL | QLC-0401 | 4mL |
大容積(オプション) | 低・中圧 | ALC-10 | 10mL | - | - | QLC-1001 | 10mL |
3. リークマスターを使用したK(Ve)キャリブレーション
一定の漏れをワーク測定系に与え等価内容積を求める機能です。
リークマスターを校正ポートに接続し、キャリブレーションモードで起動すればK(Ve)を算出し表示します。LS-1881、LS-R900 、LS-R700でこの機能が可能です。LS-1866では、リークマスターを使用して流量係数を算出し、差圧を漏れ量に変換します。