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「測定の不確かさ」入門編:検査結果の「確かさ」を見極める
私たちは、製品の「気密性」を確保するためのエアリークテスターを提供しています。 製品が規定のリーク許容量 (例えば、微小な漏れ量 など) を満たしているかを正確に判断するには、測定結果がどの程度「確か」であるかを知ることが非常に重要です。その「確かさ」を示す指標こそが、「測定の不確かさ」 (Uncertainty of Measurement) です。 このコラムでは、初学者の方に向けて、「測定の不確かさ」の基本的な概念とその重要性を分かりやすく解説します。
1. 「不確かさ」って何ですか?
「不確かさ (ふたしかさ)」という言葉を聞くと、「間違い」や「欠陥」といったネガティブな印象を受けるかもしれません。しかし、「測定不確かさ」とは、その語感とは裏腹に、実は「測定データの『確かさ』」を示す指標なのです。 あらゆる測定結果には、必ず「疑わしさ」がつきまといます。どんなに精密な計測器を使い、細心の注意を払って測定したとしても、常にわずかな幅の疑わしさが残るものです。測定の不確かさとは、この測定結果に付きまとう『疑わしさ』を数量化したものであり、測定の品質を示すために不可欠な情報です。 国際的な定義(VIM:国際計量計測用語)では、不確かさは「用いる情報に基づいて、測定対象量に帰属する量の値のばらつきを特徴付ける負ではないパラメータ」とされています。 つまり、測定という行為によって得られた値には、必ずばらつきがあり、そのばらつきの範囲 (広がり) を数学的に表現したものが「不確かさ」なのです。
2. 「誤差」と「不確かさ」はどう違うの?
測定の世界では、従来「誤差 (エラー)」という概念が用いられてきました。誤差とは、測定値と、理想的な「真の値」との差を指します。 しかし、ここに大きな問題があります。それは、「真の値」は誰にも知ることができないという点です。測定には必ず、ばらつきやかたよりの要因が含まれてしまうからです。不確かさは、「真の値は誰にも分からない」という前提のもとに成り立っています。私たちは、測定結果に付随するばらつきや、かたよりを統計的・計量学的に総合的に評価し、真の値が含まれていると合理的に考えられる区間を推定します。 したがって、「誤差」が「真の値からのズレ」という概念であったのに対し、「不確かさ」は「測定結果の疑わしさを数値で表したもの」なのです。
3. 不確かさの正体:ばらつきと、見えない「かたより」
測定の不確かさを生み出す要因は多岐にわたります。例えば、エアリークテスターによる気密検査を考えてみましょう。
1. 計測器の要因
テスター自体のかたより、経年変化(エージング)、摩耗、ドリフト、表示の読み取り性の悪さなどが原因となります。また、計測器の校正にも不確かさがあり、これはあなたの測定結果に累積されます。
2. 計測器の要因
検査対象の製品が、測定中に安定していない場合 (例えば、温度変化で体積がわずかに変動するなど)。
3. 環境の要因
検査室の温度、気圧、湿度など、計測器や測定対象に影響を及ぼす条件です。特に気密検査では、温度変化がわずかな空気の体積変化につながり、漏れ量の測定に影響を及ぼす可能性があります。
4. 作業者の技能の要因
測定準備や、測定中の微細な目盛の読み取り (エアリークテスターでは少ないですが) など、人の判断に依存する部分です。これらの要因は、大きく分けて「偶然的要因」と「系統的要因」として作用します。
- 偶然的要因 (Random)
測定を繰り返すたびにランダムに結果が異なります。例えば、測定器の微細なノイズによる読み取り値のわずかな変動です。 - 系統的要因 (Systematic / 未知のかたより)
同じ要因が個々の繰り返し測定に同じように影響を及ぼします。例えば、デジタル温度計が「20.0℃」と表示している場合、真の温度が19.5℃から20.5℃の間にあると推定されるとき、その「真の値からのズレ」は測定期間中一定であるため、これは未知のかたよりとして不確かさ評価に含められます。
不確かさ評価とは、これらすべての要因 (偶然的なばらつきと、系統的な未知のかたより) を総合的に見つけ出し、数値化することなのです。
4. 不確かさの評価方法と表示方法
不確かさを評価する際には、「タイプA評価」と「タイプB評価」という2つのアプローチがあります。この分類は、不確かさの要因の性質(偶然か系統か)によるものではなく、評価方法によって分けられます。
- タイプA評価
統計学的な手法を用いて不確かさを推定する方法です。通常、繰り返し測定の結果 (データ群) から得られます。 - タイプB評価
統計的手法によらず、過去の経験、校正証明書、製造者の仕様書、その他の公表情報、または常識(経験)など、他のすべての情報を用いて不確かさを推定する方法です。
エアリークテスターの検査結果を例にとると、測定結果 L(リーク量、単位はmL/minなど)について、以下のように不確かさが示されます。
\(L=X \pm U\) (信頼水準 95%)
- \(X\) : 測定によって得られたリーク量の値 (最良推定値)
- \(\pm U\) : 拡張不確かさ (真の値が含まれると推定される区間)
- 信頼水準95% : この区間 (\(X \pm U\) の中に真の値が含まれていることに、私たちが95%の自信を持っていることを示します。
この「拡張不確かさU」は、個々の小さな不確かさの要因(校正の不確かさ、環境変動による不確かさ、繰り返し測定による不確かさなど)をすべて合成し、そこに「包含係数k」を掛けることで求められます。一般的に、包含係数 k = 2を使用すると、約95%の信頼水準が得られます。
5. なぜ不確かさの評価が必要なのか
私たちが製品の不確かさを理解することは、単に良い測定を行うためだけではありません。 最も重要なのは、「合否判定」や「仕様への適合性」を正しく判断するためです。 たとえば、「漏れ量が 0.5 mL/min以下であれば合格」という仕様 (許容範囲) があったとします。もし測定結果が 0.48 mL/minだったとしても、その測定の不確かさが ±0.05 mL/minだった場合、測定結果の真の値の範囲は 0.43 mL/minから 0.53 mL/minとなります。この範囲の一部が許容限界である を超えてしまうため、確実に合格したとは言い切れない状況が発生します。 不確かさを評価し、それを結果に明記することによって、その測定が目的にかなったものかどうか (製品の許容範囲を満たしているか) を正しく判断できるようになるのです。 測定結果が、不確かさの表明を伴って初めて完全なものとなるように、私たちの製品の品質を客観的に証明するためにも、不確かさの理解と評価は欠かせません。
不確かさの概念は、知識と経験、そして専門的技能に依存する、奥深いテーマです。今回のコラムで、その第一歩を踏み出していただけたなら幸いです。